2010年10月20日

Coffee Break58 賛歌と罪




  山あかね じゃれつくように 空気切る
  山あかね 草抜く手もと 笑うごと
  山あかね 目をこらしては 数かぞえ
  山あかね 羽きらめかせ 秋の午後
  山あかね どの子とどの子 カップルか

  ひらひらと 紋黄蝶は 恋ざかり
  恋歌え 秋の山路に 紋黄蝶
 
               (山路を散歩しているときに)


 しぜんの生き物の性は、命の賛歌です。本能の命じる行動と、神様が彼らにお与えになった規範が一致しているので、カップリングする虫や鳥の姿を見ているとじつに楽しそうです。彼らにとって障害は、むしろ彼らの住処である自然が破壊されていくことでしょうか。それさえ、知らぬげに飛び回る彼らの恋はさわやかです。
 
☆☆☆☆
 

 ヤコブは伯父のふたりの娘レアとラケルを妻にもちました。これで、たんなる伯父の客ではなく、娘婿としてラバンの家の一員になったわけです。
 ふたりは対等な妻でした。サラとハガルのような関係ではありません。順序がレアの方が先になったのは、レアが姉娘だったからです。ヤコブ自身は、ラケルとの結婚を望んでいたので、いわば、伯父に「だまされた」結果です。
 けっきょく、ヤコブは十四年間、働くことになりました。実際には十四年後に「年季明け」とはならなかったのですが、とにかく、愛するラケルといっしょになりたいばかりに、そのような約束をしたのです。

 すでにサラとハガルの例で見たように、一人の男と二人の女の組み合わせでは、争いが起きます。一人が正妻で一人が側女と格の違いをつけても同じです。神様は、男女は一対で安定するようにお造りになったのです。
 あなたが別の女性(男性)と一人の男性(女性)を張り合っている場合、やきもきして、落ち着かす、苦しくて、傷つくのは当然なのです。安定する以前の状態なのですから。
 
 まして、レアとラケルは姉妹でした。対等な妻で対等な姉妹なのですから、一人の男をめぐって、熾烈なライバル意識が芽生えました。
 このような中では、夫となる男が二人を平等に愛せばことは収まるのでしょうか。それもまた、頭の遊びに過ぎません。そのように決めてみても、人の感情は理屈どおりいきません。事実、ヤコブはラケルを愛していました。
 
 ☆☆☆☆

 神様はレアを憐れに思われたのでしょう。レアはみごもって男の子を産みます。最初の子はルベン。つぎの子はシメオン、三番目はレビ、四番目はユダと名づけられました。すべて男の子です。
 一方ラケルは不妊の女でした。
 これは、ラケルにとって屈辱でした。当時、妻となる女性の最大の務めは、夫のために子どもを産むことでした。どんなに愛されていても、美しくても、子どもが産めなければ価値はないと言えるほどでした。


 ラケルは姉にはげしく嫉妬し、夫のヤコブに、「私に子供を下さい。でなければ、死んでしまいます。」(創世記30章1節)と、詰め寄りました。

 ヤコブは当然怒りました。

「私が神に代わることができようか。おまえの胎内に子を宿らせないのは神なのだ。」(2節)
 ラケルは言いました。「では、私のはしためのビルハのところに入って、彼女が私のひざの上で子を産むようにしてください。そうすれば私が彼女によって子どもの母となれましょう。」(3節)


 こうして、ビルハがヤコブの子どもを産むのです。ビルハは続けてもう一人の男の子を産み、すると、ラケルは、「わたしは姉と死に物狂いの競争をして勝った。」と凱歌を上げるのです。
 レアは、四人産んで、もう自分が子を産まないと思い、今度は自分のはしためジルバをヤコブに与えます。そして、ジルバもまた二人の男の子を産みます。
 レアは、「なんと幸せなこと。女たちは私を幸せものと呼ぶでしょう」と、喜ぶのです。
 自分の召使に夫の子供を産ませても、ライバルの姉や妹に勝ったというこの感覚は、今では、とうてい理解しがたいことですが、二人はそれほど、嫉妬と競争の中にいたのです。

 このあと、レアがまた子どもを産み、やがて、ラケルもみごもって子どもを産みます。24節まで、延々と姉妹の競争が繰り広げられています。
 本来、人間の賛歌である性、その結果としての愛でるべき子どもの誕生が、愛を獲得する競争の道具になっているのです。これが罪でなくてなんでしょう。

 妻に子どもが生めない場合、召使を夫に差し出す。あるいは、一夫多妻が日常的だった社会では、このような煉獄が、あちこちで繰り広げられていたのかもしれません。

 ともあれ、こうして生まれてきた男の子たちが、イスラエル12部族の名祖となるのです。



posted by さとうまさこ at 04:00| Comment(0) | TrackBack(0) | Coffee Break | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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