2010年10月27日

Coffee Break65 ゆるし




 ヤコブは、神様と四つに組む激しい祈りの中で、神様から祝福をいただき、イスラエルと言う名前になりました。
 遅ればせながら立ち上がって、先に出た妻たちや子供たちを追い、合流し、今度は全員の先頭に立ちました。矢面に出たのです。
 神様から腿のつがいを外されたヤコブは、もうすっかり砕かれていました。観念したとか、開き直ったといった人間的な意識ではなく、心から悔い改めたのです。

 遠くにエサウが多数の手勢を率いて近づいてきます。ヤコブは地面にひれ伏してお辞儀をしました。起き上がると、足を引きずって歩き、また、地面にひれ伏してお辞儀をしました。こうして七回、挨拶を繰り返しているうちに、兄の一行が目前に来ました。

 エサウは彼を迎えに走ってきて、彼を抱き、首に抱きついて口づけし、ふたりは泣いた。(創世記33章4節) 


 なんと、恨んでいるはずのエサウが「走りよってきて」ヤコブを抱きしめました。エサウはヤコブを「泣いて口づけする」ほど、弟との再会を喜んでくれたのです。緊張の糸が切れてヤコブも泣きました。もともと、ふたごの兄弟です。
 兄は、弟のうしろにいる女・子どもは誰かと尋ねます。ヤコブは、「神がしもべに与えてくださった」家族であると紹介します。
 続いて、エサウは途中に出会った家畜の群れについて尋ねます。
「あれは、私から兄上への贈り物です」と答えるヤコブに、エサウは快活に笑って言います。
「わたしもたくさんの家畜をもっている。もらわなくてもけっこう」
 弟を迎えに出るのに、四百人のしもべを従えて来るのですから、ヤコブが家を離れていた二十年のあいだに、エサウはエサウで成功し、大きな族長になっていたのです。
 あくまで、収めて下さいと言い張るヤコブに、「それでは」と贈り物を受け入れたエサウは、すぐに自分のところに来るように誘います。ヤコブが女・子どもを連れているし、弱い家畜もいるのでゆっくりと行きますと断りますと、それでは、何かの役に立つだろうから、自分のしもべを何人か置いていこうと申し出てくれます。鷹揚で、カラッとして、明るいエサウ。昔のイメージそのままに、筋肉りゅうりゅうで髭の濃い狩人の姿が浮かびます。
 兄の申し出を固辞するヤコブの方こそ、これまでのいきさつからして、まだ、何か心にわだかまりがあるのかしらと思わせるほどです。 



 この話は、聖書のいくつかの物語を思いださせます。
 兄が弟を殺したカインとアベルの話。(創世記4章)(Coffee BreakP)
 しかし、エサウは、カインと違って自分の怒りを治めることができたのです。かつては、身の回りのものに、「ヤコブを殺してやる」と言うほど、恨み怒っていたのに、です。

 新約聖書の「放蕩息子のたとえ」。(ルカ15章11節〜24節) ご存知のように、父親に頼んで、無理やり財産分けをしてもらい、遠くの国に出かけて遊びほうけて無一物になった息子が、行き場がなくて、結局家に戻ってくる話です。 息子は、「もとのような父との関係は無理でも、しもべとしてでも置いてもらおう」と帰って来たのです。ボロボロの服をまとってやせ衰えて帰って来たわが子を、遠くから見た父親が走り寄って、抱きしめ口づけします。



 許しは、もとより、キリスト教ではとても大切なことです。それは神様の愛に関わることだからです。創世記をはじめから読んできて、私たちは、何度も神を裏切る人間を、神様が許されるのを見てきました。カインも許していただきました。増え広がって罪を犯し、どうにもならない人間を滅ぼすこともできたのですが、神はノア一族八人を助け、その後の人類の祖とされました。バベルの塔を築いた人間たちは、ただ、散らされただけです。

 アブラハム・イサク・ヤコブを選び出され、人類の救いの器として用いられようとするとき、神は、その家族に、「許し」が実現するという奇跡を行なわれたのです。
 この許しの実現は、ヤコブの子どもヨセフと他の兄弟たちとの間の感動的な許しの物語として、もう一度、創世記に記されています。

「七度の七十倍も許しなさい」(マタイ18章22節)というのは、イエス様の教えですが、新約聖書に唐突に出てきたものではないようです。イエス様もたとえ話を用いておっしゃっています。天の父が私たちを許してくださったのだから、私たちは人を許さなければならない。
「目には目、歯には歯」という等価復讐は、人間の思いで実行できるものです。しかし、許しは神さまから出たことではないでしょうか。ヤコブが泣きエサウが泣いたとき、神様は、ふたりをご覧になって「よし」とされたことでしょう。


 あの、世界のはじめに、創造されたばかりの天地をご覧になったときのように。(創世記1章24節、31節) 





posted by さとうまさこ at 04:00| Comment(0) | TrackBack(0) | Coffee Break | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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