2010年11月06日

Coffee Break75 大飢饉




 パロの夢を解き明かしたヨセフは、その場で宰相に任命されました。まさに、夢のような話です。ちょっと眉に唾をつけたくなるほどです。

 日本人なら、貧しい足軽から、権力者として最高の地位に上り詰めた豊臣秀吉を知らない人はいないでしょう。でも、その秀吉も、一朝一夕に太閤殿下と呼ばれるようになったのではありません。とても苦労をして、たくさんの命を張った戦さで獅子奮迅に働いて、さらに、いくつもの幸運が重なって、何十年もかけて、だんだん出世していったのです。

 ヨセフがパロの命令で、いきなりパロに次ぐ権力者になったいきさつはまったく違います。これは神様の物語だからです。人間の頭で考えると、ありえないような話です。
 それが、聖書のおもしろさだと私は思います。また、それゆえ、「わからない」「おもしろくない」と思う人もいるかもしれません。

☆☆☆☆


 きっかけは、パロが見た一夜の夢でした。ヨセフがその解き明かしに呼ばれたのは、その前に宮廷の料理人と献酌官の夢を解き明かし「的中した」実績があったからです。
 ヨセフは占い師ではありません。また、知ったかぶりをして、自分の頭で考えた推理を話したのでもありません。
 ヨセフの前に、エジプト中の呪法師や学者が呼ばれているのです。彼らができない解き明かしを、学者でもなく、呪法師としての訓練も受けていないヨセフができたのはなぜでしょう。

 ヨセフ自身が言明しています。
「私ではありません。神がパロの繁栄を知らせてくださるのです。」(16節)

 神はパロにも働かれたのです。ヨセフの話を聞いて、パロは以下のような感想を洩らすのです。

「神の霊の宿っているこのような人をほかに見つけることができようか。」(38節)
 

 たとえば、ヨセフの父ヤコブが湿った岩陰に生え広がるしぶとい羊歯だとすると、ヨセフは生まれつき、日差しの中のきらめきにいる大輪のゆりのようです。奴隷に売られて苦労をするのですが、ヤコブが伯父ラバンの家でするような「耐える」イメージがありません。初めから、神がともにいてくださって、ポティファルの家でも、牢獄でも上司の目を引き、たちまち取り立てられるのです。

☆☆☆☆☆

 ヨセフは、エジプトの宰相となって豊作の七年間に、穀物を蓄えました。
 はたして、そのあとに、ひどいききんがやってきました。それは「世界中」に及んだと聖書は書いています。この「世界中」は、今私たちが考える世界中ではないでしょう。聖書がはじめユダヤ民族に与えられたものとして書かれたのですから、エジプトと中東全域でしょうか。エジプトはとくに穀倉と言われるほど豊かな土地だったのですが、それがききんになるのですから、ほかは推して知るべしでしょうか。アブラハムの時代もききんが起こってエジプトに避難した(創世記12章10節)と、聖書にあります。
 
 「備えあれば憂いなし」。ヨセフはたくさんの穀物を蓄えておいたので、まず、エジプトの国民にそれを放出することができました。放出と言ってもお金で売るのですから、パロの家は豊かになります。当時の政治制度は、今と違って国民の福祉などと言う概念はありません。パロの家を富ませたヨセフの名声は上がったことでしょう。
 その上、近隣の国に、「エジプトに行けば穀物がある」と知れましたから、みんなが買い付けに来ました。ここでも当然お金が集まることですから、こうしてエジプトはますます富みます。すべて、ヨセフの先見の明(じつは神のことば)のなせるわざです。
 
 もっとも、ヨセフ物語の主眼は、ヨセフのきらめくような出世を語ることではありません。神にはもっと深遠なご計画があったのです。
 カナンにいたイスラエル(ヤコブ)とその家族も、ききんに直面していました。エジプトには穀物があると聞いたヤコブは、末っ子ベニヤミンを除いた息子十人に、穀物の買い付けに行かせるのです。
 そこで、ヤコブの十人の息子たちは、ヨセフと対面することになります。もっとも、その時、ヨセフはカナンで隊商に売られてから二十年以上が経っていました。三十八歳以上だったでしょう。エジプト人の身なりをし、通訳つきで彼らと話をするりっぱな宰相がヨセフだとは、兄たちはだれも気がつきませんでした。
 しかし、ヨセフの方は兄たちに気がつきました。
 穀物を手に入れるため、ヨセフにお辞儀する兄たち。かつて、兄たちを怒らせた夢はそのとおりになったのです。そう思う時、彼の心のなかは複雑だったでしょう。
 ヨセフは懐かしさを隠して、一計を案じました。ヨセフは、同じ母から生まれた弟ベニヤミンを連れてくるように彼らに言いつけ、それまでの人質としてシメオンを拘置するのです。





posted by さとうまさこ at 04:00| Comment(0) | TrackBack(0) | Coffee Break | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。