2011年04月27日

Coffee Break242 女性の相続(民数記27章1節〜11節、36章1節〜6節)



 今の時代、女の子どもが家の財産を相続しても、だれもふしぎに思いません。子どもが女の子ばかりだったら、「家」の存続が危ういなどと危惧する人もいません。選挙の投票用紙は二十歳以上ならば、ご主人(と呼ばれている方)にも奥さんにも、おばあちゃまにも、まだ、親のすねをかじっている学生でも送られてきます。
 私たちはみんな、日本国民として、数を数えられる存在です。

 でも、これは歴史的に見ても、きわめて最近のことです。日本でも戦前までは、家督相続権というものがあって、財産は男の子、それもふつう、長男が継ぎました。女の子は親が特別に配慮して贈与してくれないかぎり、財産はないわけです。参政権もないし、働くにしても職場が限られていましたから、独立して家を立てて暮らすなど、思いもよらないことでした。

 もし、家に男の子がいない場合、家の家督は女の子に養子を取って、その家を継いでもらうという形で続いたのです。これは、男子に圧倒的な権威があった時代には、ある意味で名目と実権のねじれがあったのでしょう。養子は、「粉ぬか(米のぬか)三合あったら、なるものではない」と言われ、いっぽう、養子を取った女性は、一生、夫に気を使わなければならなかったのです。

 とくに、このような制度が守られたのは、江戸時代の武家社会の制度と、土地に縛られた農民でした。武家社会では、上は将軍家・大名から、下は足軽まで、男の子でなければ世襲の仕事を継げないのです。大名家などは、跡継ぎがなければ、改易(お取り潰し)なのですから、家来まで含めた、何千人もの死活問題です。
 その名残で、封建制度が終っても、家督は男の子が継ぐという法律が、それに代わって生きていたのです。
 「さとう家の娘」と「さいとう家の息子」が結婚して、さいとうを名乗って、さとう家の田を耕しても良いではないかと思われるようになったのは、かなり最近のことです。家督が財産だけでなく、先祖の供養や家の墓の継承と結びつけて考えられていたため、家名にこだわったことも大きかったのでしょう。


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 さて、ヨセフの子マナセの一族のツェロフハデの娘たち──ツェロフハデはヘフェルの子、ヘフェルはギルアデの子、ギルアデはマキルの子、マキルはマナセの子──が進み出た。娘たちの名はマフラ、ノア、ホグラ、ミルカ、ティルツァであった。(民数記27章1節)
 彼女たちは、モーセと、祭司エリアザルと、族長たちと、全会衆との前、会見の天幕の入り口に立って言った。(2節)
「私たちの父は荒野で死にました。彼はコラの仲間と一つになって主に逆らった仲間には加わっていませんでしたが、自分の罪によって死にました。彼には男の子がなかったのです。(3節)
 男の子がなかったからといって、なぜ私たちの父の名がその氏族の間から削られるのでしょうか。私たちにも、父の兄弟たちの間で所有地を与えてください。」(4節)


 これは、今から見ると、とうぜんの申し出です。カナンでの土地をそれぞれの部族氏族家族に与えられる時に、人口調査で頭数を数えられた男だけに与えられたら、男親がすでに死に、女の子しかいない家族は、土地がないことになります。
 これは、マナセの一族のツェロフハデの娘たちが申し出たのですが、じっさいには、このような家族は、ほかにもいたに違いありません。
 
 モーセはさっそく、彼女たちの訴えを主の前に出します。お伺いを立てたわけです。

 主は、ツェロフハデの娘たちの言い分をお認めになりました。
 同時に、男の子がいないほかのケースについても、カナンでの相続地を与えるようにと命じられました。また、娘もいない──子供のいない家に対しては、その相続地を兄弟たちに与えること、兄弟もいない場合は、その父の兄弟たちに与えるよう、その父の兄弟たちもいない時には、その相続地を「彼の氏族の一番近い血縁のものに与え、受け継がせるように」決められました。


 しかし、これに対し、のちに条件がつきます。

 ヨセフ族の一つ、マナセの子マキルの子ギルアデの氏族に属する諸家族のかしらたちが進み出て、モーセとイスラエル人のかしらに訴えて、(民数記36章1節)
 言った。「主は、あの土地をくじによってイスラエル人に相続地として与えるように、あなたに命じられました。また、私たちの親類ツェロフハデの相続地を、彼の娘たちに与えるように、あなたは主に命じられています。(2節)
 もし彼女たちが、イスラエル人の他の部族の息子たちにとついだなら、彼女たちの相続地は、私たちの父祖の相続地から差し引かれて、彼女たちがとつぐ部族の相続地に加えられましょう。こうして、私たちの相続の地所は減ることになります。(3節)



 独身の女性がマナセ族以外の男と結婚する場合、全体としてみると、マナセ族の土地が、ほかの部族の土地になってしまうことを心配しているのです。
 そこで、主は仰せになるのです。

 「彼女たちは、その心にかなう人にとついでよい。ただし、彼女たちの父の部族に属する氏族にとつがなければならない。」(6節)

 同族の者たちから横槍が入った格好ですが、結婚は、やはり、社会の利害関係や制度に拘束されるようです。





posted by さとうまさこ at 04:00| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | Coffee Break | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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