2010年11月07日

Coffee Break76 悲壮な旅立ち




 兄弟たちと出あったヨセフは、泣きたいようななつかしさを胸に押し隠して、いろいろと策を練ります。

 その第一。兄たちに「おまえたちはエジプトの様子を探りに来たスパイだ」と言いがかりをつけました。兄たちが「とんでもありません。私たちはカナンに住むヘブル人で、十二人兄弟でした。そのうちの一人はいなくなりましたが、末っ子を置いて十人がいまここに来ています」と、必死に訴えます。しかし、ベニヤミンに逢いたいヨセフは、シメオンを縛り、「おまえたちの弟を連れてきたら、話しを信じてやる」と言って、拘置してしまいます。
 第二。彼らが持ってきた袋に穀物を満たしてやりますが、しもべに命じて、受け取った銀(お金)を全部、それぞれ袋の口に戻しておきます。

 ヤコブの息子たちが、カナンに帰る途中、ろばに餌をやろうと袋の口を開けると、それぞれの袋に払ったはずの銀があるではありませんか。彼らは震え上がりました。何かのワナだと気がついたのです。相手はエジプトの宰相です。何かあっても、争えば勝ち目はありません。

 カナンに戻って、彼らは父ヤコブに、ことの一部始終を話します。
 ヤコブは歎きます。

「あなたがたはもう、私に子を失わせている。ヨセフはいなくなった。シメオンもいなくなった。そして今、ベニヤミンも取ろうとしている。こんなことがみな、私にふりかかってくるのだ。」(42章36節)

 ルベンは長子として責任を感じたのでしょう。
 もし、ベニヤミンを連れ帰ることができなかったら、私の二人の子供を殺してもかまいませんから行かせて下さいと言います。
 ルベンの二人の子は、ヤコブにとって孫に当るのだからこの人質はあまり有効ではない気がするのですが、昔のカナンでは有効だったのでしょうか。案の定、ヤコブはそんな条件を飲みません。

「私の子は、あなたがたといっしょに行かせない。彼の兄は死に、彼だけが残っているのだから。あなたがたの行く道中で、もし彼にわざわいがふりかかれば、あなたがたは、このしらが頭のわたしを、悲しみながらよみに下らせることになるのだ。」(38節)

☆☆☆☆


 もう、だれもエジプトにやるまいと、ヤコブは思ったのでした。
 一方、夢で神託を受けたヨセフは、すべてを見通していました。ききんは七年間続くことになっているのです。いずれまた、ヤコブの息子たちは穀物を買いにエジプトにやってくる・・・。

 じっさい、穀物を食べつくした時、ヤコブは息子たちに、またエジプトに行くよう頼みました。
 それで、ユダが父に、ベニヤミンを連れて行かなければ、食料を売ってはもらえないことを、もう一度、告げました。
 ヤコブは憤慨して、息子たちに言います。

 なぜ、おまえたちは、国に弟がいるなどと、余計なことを言ったのだ!
 息子たちも必死で言い訳をします。
 あの方(エジプトの宰相)が、あなたがたの父はまだ元気で生きているか。あなたがたに弟はいるかと、しつこく聞くので、つい答えてしまったのです。まさか、弟を連れて来るように言われるなど、思いもしませんでした。

 故郷のこと、父ヤコブやベニヤミンのことを知りたいヨセフが、誘導尋問したとは、夢にも思っていないのですから、話はかんたんではありません。
 ユダが父に取り成します。
 
 私自身が彼の保証人となります。私に責任を負わせてください。万一彼をあなたの元に連れ戻さず、あなたの前に彼を立たせなかったら、私は一生あなたに対して罪あるものとなります。(43章9節)


 とうとう、ヤコブは、息子たちを行かせることにします。綿密な性格のヤコブらしく、みやげ物などの手配も指図します。
 彼らは父が命じたとおり、カナンの名産品である香油、蜂蜜、香料、薬草、くるみ、アーモンドなどを、宰相への贈り物として積み込みました。支払い用の銀も前回に返してもらったものの上に、今回は穀物を前回の二倍の値段で買うよう用意していきました。


 全能の神があなたがたをあわれませてくださるように。そして、もう一人の兄弟とベニヤミンとをあなたがたに返してくださるように。私も失う時は失うのだ。(14節)

 ヤコブのこの言葉には、彼の悲壮な思いがにじんでいます。背に腹は替えられません。一族が餓死する危機なのです。エジプトの宰相の無理難題をも聞くしかないと、決意したのでしょう。

 こうして、息子たちはまたキャラバンを仕立ててエジプトに向かいます。
 恐れ、おびえている彼らの前に、意外な展開があるのです。



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posted by さとうまさこ at 04:00| Comment(0) | TrackBack(0) | Coffee Break | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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