2011年05月08日

Coffee Break253 のがれの町(民数記35章)




 あなたがたが、レビ人に与える町々、すなわち、人を殺した者がそこにのがれるために与える六つの、のがれの町と、そのほかに四十二の町を与えなければならない。(民数記35章6節)
 あなたがたは町々を定めなさい。それをあなたがたのために、のがれの町とし、あやまって人を打ち殺した殺人者がそこに逃れることができるようにしなければならない。(11節)
 この町々は、あなたがたが復讐する者から、のがれる所で、殺人者が、さばきのために会衆の前に立つ前に、死ぬことのないためである。(12節)
 


 十戒の五番目の戒めは、「殺してはならない」です(出エジプト記20章13節)。私たち人間社会で、一番深刻な過ちは人の生命を奪うことです。ですから、日本でも、殺人罪に一番重い刑罰が科せられています。

 ただ、残酷な殺人事件の加害者が、死刑になるとは限りません。加害者が未成年だったり、情状酌量の余地があったりして、死刑判決が下りない場合、遺族が「涙の記者会見」をする場合もあります。
 世の人々もそのような遺族に同情を寄せます。「目には目を。歯には歯を。命には命を」と、聖書のことばを思い出したりするのです。

 このことばは、じっさいにそうしなさいということではなく、過剰な報復を戒めているのです。というのも、人間の復讐心は強いもので、事実、歴史をさかのぼれば、多くの国で私的報復(あだ討ち)が認められていました。
 日本でも、1702年(江戸時代)、赤穂浪士のあだ討ち(忠臣蔵)が、大ニュースになり、浄瑠璃や歌舞伎の出し物になったのです。

 
 ☆☆☆☆ 

 人を打って死なせたものは、必ず殺されなければならない。(出エジプト記21章12節)
 ただし、かれに神が御手によってことを起こされた場合、わたしはあなたに彼ののがれる場所を指定しよう。(21章13節)
 

 現代のほとんどの国では、私的報復(あだ討ち)は、法律上認められていません。どんなに悔しい犯罪の犠牲になっても、裁決は国の司法当局に任されなければならないのです。
 
 あだ討ちが認められていた時代の一番の問題は、それが故意の殺人でなく、不測の事故であっても、復讐で殺される場合があることです。また、冤罪や人違いで殺されるかもしれません。

 
 敵意なく人を突き、悪意なしに何か物を投げつけ、または、気がつかないで、人を死なせるほどの石を人の上に落とし、それによって死なせた場合、しかも、その人が自分の敵でもなく、傷つけようとしたのでもなければ、会衆は打ち殺した者と、その血の復讐をするものとの間を、これらのおきてに基づいてさばかなければならない。(民数記35章22節〜24節)
 
 会衆は、その殺人者を、血の復讐をするものの手から救い出し、会衆は彼を、逃げ込んだそののがれの町に返してやらなければならない。彼は聖なる油をそそがれた大祭司が死ぬまで、そこにいなければならない。(25節)


 これを読むと、悪意ある殺人でなくて、裁判で無罪になっても、彼は故郷には戻れず、逃れの町で生活したのでしょう。うっかり、町の外に出てまだ、復讐者がいた場合、殺される可能性があったのです。ただし、大祭司が死んだとき、彼は完全に罪赦され、そこから出ることができました。その時は、復讐するものも、もう、手が出せなくなるのです。

 もちろん、のがれの町に逃げ込んだのに、裁判の結果、死刑になる場合もありました。

 ただ、その場合も、証人の証言によってその殺人者を、殺さなければならない。しかし、ただ、ひとりの証人の証言だけでは、死刑にするには十分ではない。(30節)

 死刑になる罪を、ふたり以上の証言によって裏づける制度は、裁判の公正を保障するものです。
 
 十戒の「殺してはならない」という戒めは、悪意ある殺人者は死刑であると規程しています。けれども、その適用は、何重ものセーフティネットで過剰な報復を防ごうとしています。
 のがれの町の規程には、殺人事件、殺傷事故に対する神の暖かい配慮が現れていると言えないでしょうか。
 




【関連する記事】
posted by さとうまさこ at 04:00| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | Coffee Break | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/199795342
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。